スケーターが使う「かっこいい!」の意味 | Explains The Different Types of Love

スケーターのトリックを決めている姿やメイクできずに悔しがっている姿、プッシュしている姿にですら「かっこいいなぁ」と思う瞬間がある。特になにも意識せずに放つ一言だが、私はどういったときに、どういった人に”かっこいい”と思うのか。男性スケーターもよく使う”かっこいい”という言葉。しかし、私が少し違和感を感じるのは「男の自分から見てもかっこいい」と他の男性スケーターを褒める発言である。これは同性に好意をよせることに対してジャッジしているように聞こえてしまうのが正直なところだ。

”かっこいい”に”好き”という意味が含まれるとき、その”好き”という感情はいくつかの種類に分けられるだろう。例えば、恋愛的な好意があるロマンティックラブ、肉体関係の全くない精神的な好意のプラトニックラブ、家族のファミリーラブや友情のフレンドシップラブなどがあげられる。血がつながっていない誰かにファミリーラブを感じたり、誰にでもロマンティックラブを感じることができたりと自由だ。愛の形はさまざまで、自分と相手の関係性を明確にしたい場合には、個人のコミュニケーションが鍵である。

本来は、行動や言動で心を惹かれた時の気持ちを表す”かっこいい”という言葉。日本では、女性が男性に対して使うことが多くみられるが、使う側、ましてや使われる側の性別は全く関係ないのだ。世界に比べても日本は、性別役割分担の意識が根強く残っている。世界経済フォーラム(WEF)が2021年3月31日公表した「ジェンダーギャップ(男女格差)リポート」で、日本は156カ国中120位だ。そういったこともあり、日本のLGBTに対する偏見はなくならない一方だ。日本のLGBTのコミュニティは小さく見えるが、実は欧米よりLGBT比率は高い可能性がある。集団行動性の強い日本人にとって、自分がセクシャル・マイノリティだと認めることは勇気のいることだからなのか。

アメリカでさえ、LGBT人口を正確に測ることが不可能なほどセンシティブなトピックである性的指向。まだあまり日本で見られないセクシャル・マイノリティのスケーターは、きっとこれから増えていくだろう。みんなが自分の性的指向をオープンにし、心地よくスケートできる環境を作るには、ひとりひとりが理解する努力と受け入れる心をもつことが大切である。また、「自分は異性しか愛せない」と言い張ってきた人も、同性への”好き”がフレンドシップラブだけなのか考えてみると、案外ほかの愛の形も当てはまるかもしれない。